胡蝶蘭

ホウコク








学校帰り、ばったり慎吾に会った。



別に待ち合わせたわけでもなく、偶然に。



「久し振りじゃん。」


「な。
だいぶ会ってなかったもんな。」



2週間近いか、と慎吾は指を折った。



「そんなにか。
道理で懐かしいわけだ。」


「ほんとにな。
どっか寄ってくか?」


「うん。」



頷くと、例のごとく、ゲーセンへ。



薄々わかっていたが、目的地を理解するとやはり笑えた。



「新しいゲーム入ったんだよ、文句あるか?」


「いや、ないけど。
ほんと好きだな。」


「生きがいだからな。」


「金かかる生きがいはさっさと捨てて、新しいの見つけたほうがいいよ。」



喧しい、と慎吾は誓耶を小突いた。



「で、新しいのってどれ?」



自動ドアをくぐった途端に、喧騒にのまれる。



誓耶は軽く耳を塞いで、声を張り上げた。



慎吾が耳のところに手をやり、聞こえなかったとアピールする。



誓耶はさっきよりも声を上げて、繰り返した。




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