胡蝶蘭
ホウコク
*
学校帰り、ばったり慎吾に会った。
別に待ち合わせたわけでもなく、偶然に。
「久し振りじゃん。」
「な。
だいぶ会ってなかったもんな。」
2週間近いか、と慎吾は指を折った。
「そんなにか。
道理で懐かしいわけだ。」
「ほんとにな。
どっか寄ってくか?」
「うん。」
頷くと、例のごとく、ゲーセンへ。
薄々わかっていたが、目的地を理解するとやはり笑えた。
「新しいゲーム入ったんだよ、文句あるか?」
「いや、ないけど。
ほんと好きだな。」
「生きがいだからな。」
「金かかる生きがいはさっさと捨てて、新しいの見つけたほうがいいよ。」
喧しい、と慎吾は誓耶を小突いた。
「で、新しいのってどれ?」
自動ドアをくぐった途端に、喧騒にのまれる。
誓耶は軽く耳を塞いで、声を張り上げた。
慎吾が耳のところに手をやり、聞こえなかったとアピールする。
誓耶はさっきよりも声を上げて、繰り返した。