胡蝶蘭
座ってろ、と店長は目で言って、なんでもないように振る舞った。



誓耶は気付かないふりをして、またビンに口をつける。



しかしやはり気付かれていた。



茉理子は迷わずに誓耶の隣を陣取る。



店長が微かに眉根を寄せた。



「こんばんは。
高校生が、こんな店でなにしてるの?」



香水の香りが、漂ってくる。



その甘い匂いに軽く咽ながら、誓耶は会釈した。



「まだイツキに付きまとってるの?」



ビールを注文した茉理子は、すっと誓耶に顔を寄せた。



「やめなさいって。」



寄るな。



「あんたなんか、相手にされないわよ。」


「お客さん、困りますねぇ。」



店長の太い腕が、誓耶を引きはがす。



茉理子は少し驚いた顔をして、店長を睨んだ。



「何よ、失礼な人ね。」


「すんません。」



口上では謝ってみせるものの、店長の声色には脅すような色が混じっている。



茉理子はすぐに顔を背けた。



「ったく、なぁ?」



店長は顔を顰めて見せ、誓耶を移動させる。




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