胡蝶蘭
「イツキがあんたみたいな子どもに振り向くわけないじゃない。」



いや、振り向いてんだけど。



むしろ、身体ごとこっちに突進してきてるんだけど。



とは言えず。



誓耶は適当に相槌を打った。



「ちょっと、聞いてんの?」


「聞いてるよ、怒鳴んなよ喧しい。」



茉理子の目が吊り上った。



「ほんっと嫌な小娘。」


「ほんっと嫌なオバサン。」



オバッ、と茉理子が顔を引きつらせる。



おお、予想通りの反応。



誓耶は欠伸をかみ殺して笑った。



「調子に乗ってんじゃないわよ。」



ずかずかと茉理子が近寄ってきたかと思うと、思いっきり誓耶の頬を引っ叩いた。



「痛いっつの。」



なんだよこの展開。



メロドラマの見過ぎじゃないのこの女。



「ヒステリックに叫ぶんじゃねーよ、大人げない。」


「あんたこそ可愛げないわねぇ。」


「あんたに可愛げがどうのこうの言われたくないっつの。」



それにしても嫌な女。



勝手に怒ってあたしを叩くときたもんだ。



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