胡蝶蘭

キズ




偉槻の部屋のベッドの中。



誓耶は偉槻の傍らで、声を殺して泣いている。



ただ、抱きしめることしかできない自分が歯痒い。



何も、してやれない。



シャワーを浴びて濡れた髪を撫で、偉槻は誓耶を見守った。



「ゴメンな…。」



無意識に言葉が出る。



誓耶はなんの反応も見せない。



痛々しいくらいに赤くなった頬、そして身体。



正直、誓耶を見るのが怖かった。



自分より不安な思いをした誓耶の境遇を思うと、思わず目を閉じてしまう。



情けない…。



俺は、勝手だ。



「眠れないのか?」



偉槻は、誓耶に問う。



誓耶はちらりと偉槻を見上げ、頷いた。



「怖い?」


「うん…。」


「俺がここにいるから。
安心して寝な。」


「うん…。」



誓耶は布団の中でぐっと身体を丸めた。



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