胡蝶蘭

トラウマ








一晩偉槻の家に泊めてもらった後、誓耶は自分の家に戻った。



足が鉛のように重かったのを覚えている。



元気のない誓耶に気付いた叔母は、学校を休ませてくれた。



仲が良くないにも関わらず、彼女は誓耶の世話をしてくれる唯一の人だった。



ベッドに横になりながら、誓耶は偉槻のことばかり考えていた。



そうでなけでば、また悪夢を見てしまいそうで。



ケータイを握りしめ、意味もなく眺めていた。



と、コンコンとドアがノックされた。



「はい?」



なんだろう。



まだ昼の時間には早い。



入ってきた叔母さんの手には、手紙が握られていた。



「これ、貴方宛てに。」


「あたしに?
塾かなんかの勧誘?」



何気なく訊くと、彼女は気味悪そうに頭を振った。



「なんか、違うみたいなのよ。
ほら、差出人が…。」



言われてひっくり返すと、差出人は…



“あんたを世界で一番嫌っている者より”



ぞっとした。



茉理子に違いない。



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