胡蝶蘭
ジュウショウ ノ アイスル ヒト
外れていたらどうしようと思ったが、結果はビンゴだった。
受付に倒れこむように駆けこむと、今は集中治療室だと言い渡された。
そのままそこに泣き崩れる。
重傷なんだ、偉槻。
お願い、助かって。
親切にも、何かを察したらしい看護師は誓耶を待合室のソファに座らせ、偉槻に面会ができるようになったら呼んでくれると言ってくれた。
誓耶はそこでおとなしく待った。
ドラマみたいに、無事ですよと誰かが言ってくれるのを、ひたすら待った。
どれだけ時間が経ったかは、誓耶の精神状態からして推し測れなかった。
でも、だいぶ待った気がする。
それでも、一向に誰かが呼びに来る気配はなかった。
ふと、正面に影が差した。
見上げると、やっぱり茉理子。
誓耶は挑発的な態度をとる余裕がなかったので、弱々しく茉理子を見上げたままだった。
「なんであなたがこんなところにいるの?」
他人でしょ、茉理子は不安をにじませた声で吐きすてる。
そうだよ、他人だよ。
誓耶は顔を俯いた。
他人だけど、ここにいたい。
ここにいて、偉槻の安否をこの目で確かめたい。