胡蝶蘭
「誓耶…。」



慎吾が隣に座った。



ふごんだせいで、身体が触れ合う。



誓耶はバッと身体を離した。



「昨日とさっきのことは、忘れよう?
な?」



頭を撫でる手を、今度は振り払えなかった。



されるがままになっている誓耶を、了解したと判断したらしい。



慎吾は着替えを探し始めた。



「お前、風呂入りたいだろ?
ほら、Tシャツ貸してやるから。」


「いい、入れてもらった。」


「…そうか。
じゃあ、朝飯は?」


「いい、腹減ってない。」


「…そ。」



気まずい沈黙。



誓耶はだるくなって、ソファに寝転んだ。



息を吐く。



熱、また上がってきたな。



身体がおかしいのがわかる。



ごろりと寝がえりを打つ。



古ぼけた天井が目に入った。



あたし、何回ここで夜を明かしたんだろ。



今までにも何度かここに泊めてもらったことがある。



決まって、匡に抱かれた後だった。



シャワーを浴びて、ここに寝転がる。



それが至福のひとときだった。



こんなことをあたしは何回くり返すんだろう。



そして、慎吾はそんなあたしを受け入れ続けてくれるんだろうか。



安心と不安の混ざった不思議な心境の中、誓耶は眠りに落ちて行った。




















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