胡蝶蘭
*
「あけおめ~。」
「あけおめ~。
…じゃねぇよ!」
朝から慎吾は盛大に突っ込んだ。
アパートのドアを半分しか開けず、わめき散らす。
「お前、なんで新年早々人の部屋を訪ねてくるわけ!?」
「いいじゃんかよ。
都合でも悪いか?
女か?」
「こら、女の子がそんなジェスチャーいけません、はしたない。」
立てた小指を畳ませ、慎吾は仏頂面を作る。
「いいじゃん、寒いよ、中入れろよ。」
「いいけどよぉ。」
散々帰れと言った割には、あっさりとドアを開け放つ。
誓耶はかじかんだ手をこすり合わせながら、中に入った。
「俺は昨日仕事で疲れてんだ、おとなしくしててくれ。」
「あ、そっか、新しいバイト始めたって言ってたな。」
ポンと手を打ち、誓耶は慎吾を振り返る。
おうよ、と慎吾は得意げだ。
「なんだっけ…。」
「運送会社。
昨日、ずっと物運んでてさ、肩こって…。」
「揉んだげよーか?」
途端、慎吾は目を輝かせる。
「マジ?」
「うん、マジ。
来な。」