胡蝶蘭







「あけおめ~。」


「あけおめ~。
…じゃねぇよ!」



朝から慎吾は盛大に突っ込んだ。



アパートのドアを半分しか開けず、わめき散らす。



「お前、なんで新年早々人の部屋を訪ねてくるわけ!?」


「いいじゃんかよ。
都合でも悪いか?
女か?」


「こら、女の子がそんなジェスチャーいけません、はしたない。」



立てた小指を畳ませ、慎吾は仏頂面を作る。



「いいじゃん、寒いよ、中入れろよ。」


「いいけどよぉ。」



散々帰れと言った割には、あっさりとドアを開け放つ。



誓耶はかじかんだ手をこすり合わせながら、中に入った。



「俺は昨日仕事で疲れてんだ、おとなしくしててくれ。」


「あ、そっか、新しいバイト始めたって言ってたな。」



ポンと手を打ち、誓耶は慎吾を振り返る。



おうよ、と慎吾は得意げだ。



「なんだっけ…。」


「運送会社。
昨日、ずっと物運んでてさ、肩こって…。」


「揉んだげよーか?」



途端、慎吾は目を輝かせる。



「マジ?」


「うん、マジ。
来な。」




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