胡蝶蘭
シンゴ ガ アブナイ
誓耶は必死で匡に縋った。
「待って、頼むから!」
力一杯踏ん張り、匡の袖を引く。
しかし、匡は非情にそれを振り払った。
「馬鹿だなぁ、そんなことしても、何の意味もないってわかってるでしょ?」
「わかんない!
だから、止めて!」
「止めないよ。
俺の言いつけを守らなかった誓耶が悪いんでしょ。」
何が、言いつけだ!
涙の溜まった目で、誓耶は匡を睨んだ。
「何、その目。」
冷たく、匡が誓耶を突き放す。
尻餅をつきかけた誓耶はなんとか踏みとどまった。
「俺に逆らう、その目。」
「あたし、あんたに服従してるわけじゃない!」
「でも、そうする。」
嘲るように匡は誓耶を見下ろす。
「今までお前のこと信じてやってたのに、俺に内緒で男作ってるとはね。
見損なったよ、誓耶。」
「だから、慎吾はただの友達だって!」
「どうだか。」
信じないよ、と匡は口元に笑みを浮かべた。