初恋の向こう側

席に戻ると、後ろを向いたナミが俺の机に頬杖をつきながら言った。


「佐伯って、さっきの女と付き合ってないよね?」


なんだよ、急に。


「付きあってないけど」

「じゃーあ! なんで ”アズマ~” なんて気安く呼ばれてるわけー?」

「それは、昔から知ってるからじゃね?」


っていうか、近頃の君の方がよっぽど気安いと思うけどね? 俺は。

そこへナミの隣の席の鈴井が、話に入ってきた。


「さっき話してたのって、陸上部の椎名だろ?」


「うん」って頷くと鈴井は妙なことを言い出した。


「椎名って、三年の成沢と付き合ってんでしょ?」

「はっ? 成沢って、あの?」

「そう、成沢 龍司。バスケ部の元キャプテン」

「と、ヒロが……?」


そこでナミも口を挟んできた。


「アタシもその噂、聞いたことあるー! 成沢さんの新しい彼女が陸上部の一年だって。
確かぁ、夏休み終わってすぐの頃だよ」


そんな前から? っていうかなんだよ、その噂って?

あの成沢との接点なんてないと思うんだけど………。


< 121 / 380 >

この作品をシェア

pagetop