初恋の向こう側
席に戻ると、後ろを向いたナミが俺の机に頬杖をつきながら言った。
「佐伯って、さっきの女と付き合ってないよね?」
なんだよ、急に。
「付きあってないけど」
「じゃーあ! なんで ”アズマ~” なんて気安く呼ばれてるわけー?」
「それは、昔から知ってるからじゃね?」
っていうか、近頃の君の方がよっぽど気安いと思うけどね? 俺は。
そこへナミの隣の席の鈴井が、話に入ってきた。
「さっき話してたのって、陸上部の椎名だろ?」
「うん」って頷くと鈴井は妙なことを言い出した。
「椎名って、三年の成沢と付き合ってんでしょ?」
「はっ? 成沢って、あの?」
「そう、成沢 龍司。バスケ部の元キャプテン」
「と、ヒロが……?」
そこでナミも口を挟んできた。
「アタシもその噂、聞いたことあるー! 成沢さんの新しい彼女が陸上部の一年だって。
確かぁ、夏休み終わってすぐの頃だよ」
そんな前から? っていうかなんだよ、その噂って?
あの成沢との接点なんてないと思うんだけど………。