初恋の向こう側
中二になったオークは、身長が伸びて更にデカくなっており、耳に金色の物まで光っていた。
「自分だってガキのくせに…」
相手は年上で、しかも男だっていうのに。
人数だって倍いるのに、こんな時に黙っていないのがヒロだ。
「あーんっ?」
醜い顔を傾けて、オークが俺等の顔を覗きこんできた時、
「ブサイク」
睨み返したヒロが吐き捨てるように言った。
「あーっ? 何か言ったか今っ !?」
ヤバいって、すぐに思った。
でも、訊き返したオークに対しヒロは声を張り上げたんだ。
「ブサイクって言ったんだけど聞こえなかったの?
そんな汚い顔して、よくそんなに堂々と街を歩けるもんだね? 顔だけじゃなく心まで醜いなんて救いようのない奴……。
あんまり近づかないでよね? ブサイクが伝染ったら困るから」
見事な啖呵の切りようだが、状況を考えてほしい。
どう見ても形勢不利なのはわかっていたことだけど、さっきので事態を更に悪化させたことはオークの顔を見なくともわかった。
奥歯を噛みしめるようにしながらオークが言う。
「金、持ってんだろ?」
「アンタなんかにくれてやるお金なんてない」
俺等が立っているのは人通りの多い場所だった。
「おい、ついて来いよ?」
「勝手に自分達だけで行けば?」