初恋の向こう側
何で、こんな所でこんな奴と会わなきゃいけないんだよ……。
険しかったオークの表情が急に緩んだと思ったら、卑しい笑みを浮かべ、汚く言葉を吐いた。
「そういやオマエの母ちゃん、頭がイカれてるんだってな?
そういうのって遺伝すんじゃねーの?」
……ヒロが、黙った。
くくっと笑う奴は、これ以上ないほど下品な顔をしていた。
「こいつの母ちゃん、精神科に入院したまま出てこれねーんだってよ。可哀想になー!」
今度は後ろに顔を向け取り巻きに向かって醜く笑い、そして俺に言ったんだ。
「オマエもよー、こんな女とナンカしたらオカシイのが伝染っちまうぞ?」
「……っ!」
そっと隣を伺うと、唇を噛みしめ立っているヒロのキュッと結んだ拳が震えていた。
俺の頭に、観終えたばかり映画のシーンが蘇る。
あの主人公みたいにヒーローに変身できたらいいのに。
……ヒロのことを守ることができたら ──