初恋の向こう側

「じゃあ花火は?」言ったのは愛莉。

「いいねえー!花火」ヒロが同調する。


「でも買ってきてないんだろ?」

俺が訊くと

「「オサムー!!」」

ヒロと愛莉が声を揃えた。


「全部俺の責任かよ~」

たじたじするオサに、救世主の如く言葉を発したのは逢坂さん。

「俺、買ってこようか?」

「いやいや、いいですって。そんな悪いっすよ」


俺もオサと同じ意見だった。

夜飯の最中だし、わざわざ買いだしに行かなくても……って思ったんだけど。


「じゃあ温人君に買いだし行ってもらおっか」


鶴の一声ならぬヒロの一声に逢坂さんは腰をあげた。


「かしこまりました。お姫さま」


そう言ってヒロにニッコリと笑いかけてから、俺の方へ視線を投げた彼。

その時は、その真意を理解できていない俺だった。

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