初恋の向こう側
オサを見送った後で考えていた。ヒロと初めて過ごすクリスマスのことを。
イブの日は映画を観て買い物をして、それからヒロの家で料理を作って……。
そこまでは二人で決めてたんだけど、もしオサ達がよければ夕飯ぐらいは一緒に食べないかなって。
いわゆるクリスマス・パーティーってやつはどうか……なんて思って予定を尋ねたわけだが、あんな回答を返されたら誘うことができなくなった。
まっ、仕様がないか。
クリスマスってものは元々、恋人達が色々と盛り上がっちゃうイベントなんだから──
ぼーっとしていたら、いきなり部屋のドアが開かれた。
「オサムはもう帰ったの?」
入ってきたのは、もちろんヒロ。
「オサも今日は予備校だから。
逢坂さんの見舞い行ってきた?」
「うん。元気だったよ。あっ そうそう、もうすぐ病院移るんだって」
「うん」
「あれ、梓真知ってた?」
「いや、知らないよ」
「そお? なんか反応薄いから」
ヤバい。
こんなとこで動揺しちゃマズいよな。
心の内を悟られないように、俺は別の話題を探した。