初恋の向こう側

「小学生だったけど、選抜にも選ばれて」


俺の中の何かが、ふつふつと沸き始める。


「中学行ったらユース受けたいって、あの頃言ってたよね?」


それに、冷静に説明できるような大人にもなっていない。


「学校の部活どころか、クラブチームも辞めたなんて」


ヒロの口が止まらないことに我慢できなくて「あのさ」と声を張った。

ゆっくりと顔を向けたヒロに、僅かに語気を強めて言い放つ。


「ユースどころか、トレセンにも入れなかったんだよ」

「え」

「そんな素質、最初からなかったんだ。
海外留学したいとかJリーガーなりたいとか……所詮、夢は夢だったんだよ」


そうだよ。俺はまだほんのガキだ。

だから、ちゃんとした説明なんてまだできっこない。


< 36 / 380 >

この作品をシェア

pagetop