妖恋華
背を向けたままの己の孫に械仁は、なお言葉をつむぐ
「関係ないわけなかろう。その娘はお前の“花嫁”になるのだ」
“花嫁”その単語が出た瞬間、眉根に皺が寄る。その反応から戒斗の機嫌を更に悪化させたことは明瞭だったが、彼の背しか見ることが出来ない械仁には把握し得なかった
「俺はお前に“花嫁”などいらない、と言ったはずだ」
「いらない、か。そう言えるのは今のうちだ。我らには“花嫁”が必要不可欠なのだからな。」
勝ち誇ったかのように械仁は鼻で笑い捨てた
“花嫁”の本当の意を知っているのは自分と一族、そして全てに関係する村の重役共。当然その中には神薙の現頭首の華紅夜も含まれる
花嫁がそのままの意味なら自分もどうでもいいと口を出さなかったかもしれない
しかし、ここの村の連中は違う意味でその言葉を使う。
だからこそ自分の知らないところで何者かの意思が働くなど虫酸が走る
「明日、神薙の巫女がお前の学校へ行くことが決まった」
先程まで行われていた会合で決まったことを告げる
本来ならば、次代の頭首でもある戒斗も参加するべきだが、なにぶん彼は人と関係することを嫌っているためその会合に顔を出したことはない
「今のうちに関係を持て」
そう言い残して械仁はその場をあとにした
関係だと?くだらない。奴の言うことはいちいち神経を逆なでする
わざわざ神薙の人間の前に姿を現す気はないが、もし出会うことがあったなら――――
「………この手で終わらせる」
静かに瞼を落とし、拳をつくった手に力を込めた