妖恋華
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冷たい風が吹き抜ける屋上。この季節に好き好んでここに来るものはいない。それが分かっていたからこそ青年は一人そこに横になっていた。
始業の鐘の音に耳を傾けながらも動く意思は皆無だった。
普段から授業に出ているわけではない。気が向いたときにだけ彼は教室へ姿を現した
言うまでもなく今日は気が向かなかったのだ。
それというのも、全てあのクソジジイのせいだ―――戒斗は瞼を下ろし昨夜の出来事を思い返した
夕食を摂る気にもならず、自室に篭っていると部屋の出入口になる襖が徐に開かれた
自分はこの部屋の入室を許可していない。それにも関わらず、襖は開かれ無作法者の足が敷居を跨ぐ
鋭い眼光を横目を向けるが、何かを口にすることさえ億劫に感じ、言葉を発することはしなかった
「戒斗。」
その厳しい声音は祖父のもの。しかし、名を呼ばれた本人は意に介した風もなく口を閉ざしたまま障子の向こうの白い月を眺め続けている
「気づいているだろうが、神薙の巫女が村に来た。」
知っている。おもしろい“気”の持ち主だ。
心の中でそう呟きながらも、自分が興味を示すようなことは口にしない
そうすれば、余計なことをしないだろう
「俺には関係ない」
ここで初めて口を開いたかと思えば、紡がれたのは否定的な言葉だった
それを受け、戒斗の祖父である械仁は顔をしかめる