木苺の棘
「そうなのか
 それなら、いい・・・

 それにしても
 おもしろくない番組だな
 チャンネル変えるぞ」

「ああ・・・」

耳に絡みつく
女性アナウンサーの声に
テレビを見た漣の表情が
見る見るうちに青くなる。

「・・・嘘だろう?」

「おう、この時代に
 ヤクザの抗争だってよ
 
 若いのに死ぬなんて
 勿体ねえな」

そこに映し出された写真に
漣は見覚えがある。

俺の腕をすり抜けて
奴の元へと、アリスは
駆けて行った。

頭を下げた、巽の姿を
思い出す。
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