木苺の棘
私は、ベッドに伏せ
眠ったふりをしたまま
洋服を脱ぐ、貴方の後姿
を、盗み見ていた。

上着を脱ぎ、シャツを脱ぐ
と貴方の背には、針の跡。

黄色の肌に浮かび上がる
その厳つくも儚い彫り物を
私は、とても愛しく思う。

貴方が振り返る・・・

「アリス
 起きてるんだろう?」

煙草を銜えた貴方は
私を見つめた。

「タツミ
 本名で呼ぶのは、やめて
 何回言えば・・・・・・」

銜えただけの煙草を取った
貴方の唇が、私の唇に触れる。

重なり、求める唇・・・

赤いルージュが今度は
貴方の唇を彩る。
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