観念世界
おしまいの場所
『おしまいの場所』


 少女が、綿菓子のような道を歩いていましたら、とてもおおきな門のまえにたくさんの人が列をつくっていました。

 そこではおおきなおおきな机にすわった人が1人ずつの神さまをききながらおのおのへどこへいくかをおしえているのです。人々はその人のまえまでいき、じぶんの信じてきた神さまをつげると、とても幸せそうにゆっくり、しっかりと門をくぐり神のみもとへ旅だっていきました。

 そしてついに少女のばんになりました。その人が少女にたずねました。
「あなたの信じてきた神さまはだれですか。」

 少女はしずかに首をよこにふるとすなおにいいました。
「わかりません。私はどの神さまを信じてきたかわかりません。」
その人はおどろいたように少女にいいました。
「それではわたしもあなたに道をおしえられません。このままではマイゴになってしまいますよ。あなたは何も信じずに生きてきたのですか。」
「いいえ。そうではありません。」
 顔を真っ赤にしながら少女はいいました。
「何も信じていなくありません。わたしは死ぬまで生きてきて、すてきな人たちにめぐりあえたり、うれしいことがあったりしてとても幸せでした。わたしはそのようなことがあるたびにめぐりあわせてくれたその方に感謝しながら生きてきました。ただ、それがだれだかわからないのです。」
 少女はおおきな目に涙をためて、ふるふると首をふりながらそういいました。




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