かけがえのないキミへ
駅からだいぶ離れてしまった。
落ち着いた住宅街が立ち並ぶ。
こんな狭い街にも、緑があったんだ。
今目の前に映るものは、綺麗な緑色をした木々。滅多に緑を見なかった俺にとって、癒される部分があった。
『着いた。ここだよ』
彼が指さした方には、公園があった。
少し古びているけど、なぜか懐かしさを感じる。
そこには、数人の人たちがいて、その中にカメラを持っている人がいた。
『え…っと…』
『雑誌の企画で、地元を撮るってのがあってさ、一人じゃ寂しいから、友達呼んだんだけど、そいつ風邪引いて来れないって言うんだ。だから急遽、君を誘ったわけ』
『…???…』
俺の頭の上を?マークが3つ浮かぶ。
…なんで俺?俺、あなたのこと知らないし…
『誰かいないかって思ってたら、君を見つけてさ』
『え…俺…あなたのこと知らないです…』
彼は俺を見下ろして、
笑顔を見せた。
『俺、メンズモデルの橘遥斗っていうんだ』
…─橘遥斗─…
これが、遥斗さんとの出会いだった。