かけがえのないキミへ


今でも夫が綾音に言った言葉が鮮明に蘇ってくる。


部屋の中に入ると、お酒をグラスに注いでいる夫がいた。


『あなた、もう終わりにしましょう』



一度愛した人と別れるのはとても辛い。
だけどもう限界なんです。

あの頃のあなたはどこに行ってしまったの?

私を抱いてくれた時に、優しい言葉を言ってくれたあなたは今どこ?


『愛してる』と言って抱きしめてくれたあなたはどこ?


綾音を授かったときに、飛び上がるほど喜んでくれたあなたは…?


綾音が生まれたとき、綾音を抱いてくれたあなたの表情は…?

綾音が初めて喋ったとき、急いで会社から帰ってきてくれたあなたの父親の姿は…?



全て過去のこと。

でも私は幸せだった。
些細なことでも幸せだった。

あなたを愛したことを後悔などしていない。


あなたを愛して良かった。


あなたに抱かれて良かった…


あなたと過ごしてきた日々は一生の宝物…



< 292 / 370 >

この作品をシェア

pagetop