かけがえのないキミへ


『綾音…』


私は綾音を抱きしめた。夕日に包まれる中、強く、強く…
震える肩を、私の全てで。


『綾音…ごめんね…綾音痛かったでしょう?ごめんね…』


何度も何度も、綾音の頭を撫でる。
赤くなっている頬も…


綾音は私に答えることなくずっと笑っていた。
その時綾音の異変に気がつく。


『綾音…?なんでずっと黙っているの…なにか言って?』



ひどい不安に駆られた。ひどい恐怖が走った。

綾音の顔を手で包み込む。


綾音…あなた、声は?



『お母さんって言ってみなさい?いつものように…お母さんって…』


綾音は口を動かす。
『お母さん』って。
だけど声が…ない。


私は綾音を再び抱きしめた。
なぜ声が出ないの?


綾音の声が─…
綾音の可愛い声を─…
私はもう聞けないの?



自由になったのに、
失ったものは数知れず。

愛していた夫と、
可愛い娘の声─…




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