かけがえのないキミへ


知りたい。綾音の気持ちを。
だけど綾音の過去を全て聞いてしまった俺に、なにが出来る?

ふと自分の無力さに気がついた。
過去がとても悲しいものだった。
俺は優しく綾音に接しられる?
過去の話が蘇ってしまって、俺の全てで綾音を優しくなんて出来ないだろう。


綾音を抱きしめたいが、このドアが邪魔をする。綾音の頭を撫でてあげたいけど、
過去が俺を支配する。

過去まで愛したい。

もう少し整理する時間が必要なのかもしれない。

俺はドアノブから手を離して、その手を広げ暫く見つめた。


自分自身を整理してから、綾音を迎えにいこう。その時もドアに鍵が掛かっていたら、このドアを壊せばいい。

壁なんか無くせばいい。俺は綾音を抱きしめるから、壁なんか、ドアなんか必要ない。


手をぎゅっと握りしめて、俺はドアの向こうにいる綾音に向かって小さく呟いた。



『必ず幸せにするから待ってて…』




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