another story
天国って、こんな女の子の部屋みたいなところだったの?
それともここは地獄?
地獄にもこんな柔らかいベッドがあるものなの?


しばらくぼんやりと、ベッドの上から部屋の中を眺める。

一つひとつにお金はかかっていそうだけど、
綺麗に整頓されていたり、
ぬいぐるみが置かれていたり、
甘い香りが漂っていたり、
まあ普通の女の子の部屋、という感じ。


突然、その部屋の扉がノックされ、外から声が聞こえた。


「さゆりちゃん、起きてる?
朝ごはん出来たわよ。」


私は反射的に、ベッドから降りて、その声に
「はい。」と返事をした。


私は『さゆりちゃん』ではないのだけれど。


そういえば、死んで天国か地獄にいるというのに、
足元がしっかりとしていて、床を踏み締め、立っていられる。

疑問を抱えながらベッドから少し離れると、姿見があった。


それを何の気なしに覗き込んだ。


「…え…」
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