another story
鏡に映っていたのは、同じクラスの大谷さゆりだった。

私は訳がわからず、自分の頬に触れた。
鏡の中の“大谷さゆり”も、驚いた顔で頬に触れる。


どういうことだろう。

大きな瞳に、しっかりとした長いまつげ。
すっと通った鼻筋に、小さくて柔らかそうな口元。
少しだけ明るい黒髪は、軟らかくてくせっ毛。


どこをどうみても“大谷さゆり”だ。

お世辞にも“美人”という部類には入らないだろう“私”の顔とは明らかに違う。

呆然としていると、扉を叩く音がした。
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