男と女


「……そっか、そうだよな…!タイプでもない女ふるなんて当たり前だよな!ははっ、俺何でこんな気にしてたんだろ。」


ヒナの言葉で、もやもやと絡まっていた気持ちが一気に晴れた。

表では柴崎のことを忘れ、気にしていないよう振る舞っていたが……実は俺はあの日から今まで、柴崎が気になって仕方なかった。気になるって言っても好きとかじゃなくて、逆怨みされないかとか、柴崎の友人が何かしてこないかとか、ストーカーされないかとか……


「そんなはずねーよな!ただふっただけなんだから。」


「栄輝、気にしてたの?」


「まぁ、逆恨みとか、ストーカーとか。でもあんな女、ふって正解っ。どうせどこ行ったって整形でもしない限り誰も相手しないって!ヒナみたいに可愛い子だったら別だけどさ。」


なんだか俺の今までの悩みが馬鹿馬鹿しくなった。なんだったんだあの俺の苦悩?
今目の前には俺の全てを理解してくれる、そう、可愛いヒナがいて……


「………ヒナ。あのさ。」


こんな流れで言うのも可笑しいと思ったけど、でも今の俺には悩みから解放されて何でもできるという自信が満ち溢れていた。


「いきなり雰囲気も何もなくてごめん。俺…ヒナが好きだ。ヒナにならなんだって話せるし、話もよく合うし、一緒に話してるとすごく安心する。誰よりも大切にしたいって思う。ヒナは俺の一番の理解者だ。………俺と付き合ってほしい。」








唐突な俺の告白に、ヒナは一瞬口許をキュッと結んで俯いてしまった。…急すぎて困ってるかな?あ、やっぱ雰囲気とか女の子は気にするかな?


「えっとぉ、急すぎてほんとごめんな?ヒナも心の準備とかあるだろうし返事はまた次に会うときでも……」









「ぷっ。」











「……ん?」


気のせいだと思う。
誰かが吹いたような声が聞こえた…気がした。















だがそれは、

俺の聞き間違いでも

空耳でも







なんでも無かった。




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