魔王に捧げる物語
「ニル………?」
お風呂から上がって、部屋に戻ったミラは遠慮がちに声をかける。
室内は明るいが、見当たらない。
そう思いながら進むと、二人掛けのソファからはみ出す足を発見した。
近付いてみると、眠っているらしく動かない。
「ニル、寝てるの?」
反応はやはり反ってこなかった。
そっと側に座って彼を見つめる。
必要以上に整った顔。
甘いというより艶っぽく、
羨ましいほど長い睫毛がほんのりと影を作り、
すっと通った鼻梁や形のよい眉は文句のつけようがない。
薄い唇も血色は良くないが、それはそれで彼の容姿に似合う。
少し長めの前髪や女性にはない喉仏、きれいに浮く鎖骨、
男性にしては細い腰、手袋に隠れる骨張った長い指先、長く細い足…………。
望むならどんなものも虜にする凄艶な美。
もっと普通だったら良かったのに、とミラは思う。
好きなのに遠く感じてしまうから。