魔王に捧げる物語
自然には生まれない青い薔薇が一面に咲く庭園で、ニルはぼんやりと景色を眺めていた。
高地にもかかわらず風は少なく、髪や衣服が乱れる事もない。
美しい光景にも心がゆれる事もない………。
ただの、映像だ。
作ろうと思えば簡単に出来る。
ミラが望めばしてもいいが、自分が望む事はない。
この景色も恐らくエリアーデが望んだ事で、カインの望むものではないだろう。
ふわりと地を蹴りると体が浮いた。
何気なく見た自分の手足は、成人男性よりも明らか細く、骨と皮まではいかないが細い。
労働は無縁だし、鍛えても変わらない。
本性の人間も細かったし、いくらニルでも本性ばかりはどうしよもなかった。
「ニルと話しておいでよ」
カインがそう言った瞬間、ミラはどこか違う場所にいた。
キョロキョロと周囲を見つめるが、カインの姿はない。
目の前は見た事もない青い薔薇が一面に広がり、思わず溜め息が出るほどきれいな庭園だった。