魔王に捧げる物語
濡れた唇はすごく色っぽいのに……、切なげに寄せられた眉、揺れた瞳は見たこともないほどに苦痛に満ちていた。
息も整わないままそれを見つめると、後頭部に添えられた片手が確かめるかのように、慎重に撫でる。
「…………帰ってくるよ。ちゃんと、ここへ」
嘘。
瞳が揺れたもの、
声がかすかに震えたもの。
「例え、目に見えなくなっても…………世界の魔力は俺の基となるものだから。
そばにいるよ……どんなときも」
イヤだよ………。
そんなの!
「ぜったい………いや!
帰ってきて、
いなくなるのなんて許さないわ」
諦められたものもあるけど、これだけは諦められない。