魔王に捧げる物語
「とりあえず、コレは私が預かるよ。
お嬢さん、君が手を汚す必要はない。
君の分もやっておくから………ニルの元に行きなさい」
クルッと指先を回すと檻ごとエリュオンが消えてしまった。
ニル。
思い出したように雪原を見つめると、カインが優しく行き先を示す。
「ここからは一人で行きなさい。
ニルの僕、お前は帰るんだよ」
「ですがカイン様」
「言い訳はいらない。どのみち、お前にはこの先は行けないのだから」
イシュは悔しそうにうつむき、小さな拳をぎゅっと握る。
いつになく厳しい口調と、魔王の命令には流石にイシュも逆らえない。
見つめた先は本当に光の嵐で、ミラでさえ足がすくみそうになった。
でも、戻れない。
戻るつもりもない。
だから、
「ありがとうイシュ……」
わたしは、
「どんな世界でも………ニルといたい」
例え、死と闇が支配する世界になったとしても。
最期まで彼の側にいて、傍らで朽ちる。
この先が世界の果てで、絶界だとしても………。