魔王に捧げる物語
瞬きの間に世界が変わった。
行き交うたくさんの人々、活気に満ちた路店、
走り回る子供たち、
井戸端会議に夢中な主婦、
どれもミラの見たことのない世界、少し不安を感じてニルの服の裾を掴む。
「………これが、外」
「……そと」
「そう。ミラが望んだ景色」
明るさに目が眩んでしまいそうだった。
何度も望んで………叶わなかった広い世界。
知りたいと同時に、皆が知る普通を知らないという孤独感、
そして、“魔女”と言われてしまうかもしれないという恐怖。
「帰る?」
戸惑いを隠せない彼女を気遣うように言われた。
大丈夫、
大丈夫。
首元まである襟や、桃色のストライプの大きなリボンが胸元を隠しているから。
白いブラウスだって、たくさんのレースに彩られているから透けるようなものではない。
だから、
「行く、……行きたい」
決意を込めてニルを見上げると、頷いてくれた。