キミが刀を紅くした

 土方さんは花簪の東西南北を順番に指差して最後に旅館を指していった。そこに一つずつ、隊を置くのだろう。あぁ、それよりも。



「今さら聞くのも何ですけど、その情報って確かなんですか?」


「信頼出来る筋から仕入れたと、聞いたから、まあ大丈夫だろう」


「ならいいんですけどね」


「中で決着をつけられるなら着けても構わないぞ。わざわざ外に逃がさなくても構わない」


「分かりました」



 俺は地図の確認を終えてからふと思い出す。そういえば大和屋の旦那の件はどうなったのだろうか、と。あの日の事である。


 土方さんから話してくれたら良いのだけれど、そんな事はこの世がひっくり返ってもなさそうだ。不要な事は言わない人だから。



「土方さん、大和屋の旦那はどうなったんですか。瀬川さんとやらの所で会ったんでしょ?」



 そして大和屋の兄さんが土方さんに刀を向けたと聞いたが。それ以後の話は知らない。何せこれは吉原の旦那から聞いた話だし。

 彼も曖昧な話し方をするからなあ。事実と想像が交じってる。



「あぁ。軽く相手しただけだ」


「で、無事なんですかい」


「いや。しばらくは動けないだろう。そういう事になってるから」


「そういう事になってる?」


「紅椿の依頼を延期する為だ。誰にも言うなよ。慶喜殿に知られたら大事だ。吉原にも口止めした」


「延期なんて可能なんですか」


「足の骨でも折れば動けないだろう。そういう事になってるんだ。露見しちゃならない紅椿の任務を怪我人には任せられないだろ」



 仕事が回る可能性はないのだろうか。俺は疑問に思ったが聞かないでおく事にした。

 回ったら回った時で良いや。

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