¥時給1000万円

頭には『時給1000万円』の文字が浮かんで仕方がなかったが、どうせ印字ミスとかだろうと思えてきて、いつものような重い足取りとため息とで玄関を開けた。

一応『ただいま』という。
母親も低い声で『おかえり』とつぶやく。

気持ちを込めてない挨拶を繰り返す家庭…
いつしか誰もが当たり前になっていた。

もう一度先程のページを開きながら自分の部屋へと向かった。

やはり何度確認してもそう書いてある…
店名は『居酒屋 ネック』
住所は自転車で20分ぐらいだろうという場所にある。
居酒屋らしく営業時間が深夜0時~深夜4時と短くかつ遅い時間帯である。
『接客に自信のある方大募集!』とどこにでも書いてあるようなロゴもあった。しかも居酒屋なのに『高校生可』の文字が太字で書いてある。

どうせ『時給1000円』の間違いだろうと思いつつもダメ元で確認ついでに電話してみることにした。


「かぁさん!電話借りるよ!!」
「はいよ~!」

親の寝室にある子機を借り早速電話してみた。
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