Sin(私と彼の罪)
「ぜんっ、…ごめ………お、母さん…も」
「お母さん…?」
嫌な汗が溢れる。
どうして、ここで母親なんだ。
関係ないだろう?
ヨコイとは、何も。
「お母さんが…なんだよ?」
「……」
ぼろぼろと、彼女の精神は崩れていく。
そんな感じがした。
涙で溢れる瞳は、俺のことなどうつしていない。
重たい身体をかろうじて支えながら、俺は彼女の懺悔に耳を澄ませた。
「…私が、殺した」
「…は……?」
絶え間なく流れ続ける涙とは対照的に、強い意志の籠った声。
彼女の言葉を汲み取るのに、時間がかかった。
私が、殺した。
確かに今、そう言った。
「…違うだろ、お母さんは…」
その先は、言えなかった。
お母さん、は…?
「…ぅ…っ…ごめ……」
しゃくりあげる志乃。
なんだよ、
どういうことだよ。
嘘だと言ってほしい。
そんなこと、あるはずがないのだから。
そんなこと、ありえない。
「ぅ…わたし、が」
「なんだよ、それ…」
志乃、嘘だと言えよ。
大体、どうやって志乃に病室の母親を殺すことができる。
まさか、ヨコイの手が母親にまで?
嫌な考えが浮かび、問いただす。
「おいっ、殺したってヨコイか?!」
「違う!私…っ」
様子がおかしい。
「志乃…?」
「善…ど、しよ……」
へなへなと力をなくして志乃は俺にもたれ掛かった。
震える吐息が首にかかる。
まさか?
まさか、本当に?