Sin(私と彼の罪)
例えばこの松………なんとか君。
なんだかやけに絡んでくる。
確か大学生だけど、こういうの好きみたいだ。
私も悪い気はしないので酒を飲みながら会話を楽しむ。
「いないよ彼氏なんて。店長が勝手に言ってんの」
「本当っすか~?」
色素の薄くなった髪はワックスでツンツンしていて、触ったらいかにも痛そうだ。
まるでゼンの柔らかい黒髪とは違う。
「本当、本当。結構長いよー」
「そーなんすかっ!以外っすね」
まだ少年っぽさの残る笑顔を見せつけられ、その眩しさにくらくらする。
「え~?」
そして以外とか言われてまんざらでもない私。
気付いていたが、大分酔いがまわってきた。
くらくらも多分そっちが90%。
「じゃあ、俺にもチャンスありますよね?」
「え…」
思わず飲んでいた酒が喉につまる。
なに言ってんだ、こいつ。
「はは、何の冗談…」
できるだけフレッシュな彼の顔を見ないように、はぐらかす。
こういう真っ直ぐな好意は苦手だ。
Uターンしてダッシュで逃げたくなる。
居心地が、悪い。
「本気っすよ。シノさん人気あるんですよ?」
「やめてよ、お世辞は~」
カラカラと適当に笑う。
誉められることに慣れていない私は、素直に信じることができなかった。
「え~~?!それ、松崎君、シノに気あるってこと?!」
「なっ、松!そうなんか?!」
タイミングのいいところで、出来上がった二人の横やりが入る。
ほっとした私はすかさず傍観者を装った。
あっ。
てゆうか名前、松崎君か。
店長やカナミがぎゃーぎゃーしてるときに、私は至って冷静だった。
なにしろ、酔いがまわっていてなんだか松……なんとかやら、ゼンやら店長やらでわけがわからなかった。