Sin(私と彼の罪)
「ライムジュースの予備ってどこにあるかわかる?」
何気なく声を掛ける。
俺の声にぴくりと反応した彼女は、こちらに振り返った。
ストレートの茶髪が、後ろできれいに束ねられている。
化粧はさほど濃くなく、大きな薄茶の瞳と目があった。
「それなら、こっち」
大したこと無さそうに彼女は踵を返す。
あれ、と思ってその姿をまじまじと見つめた。
大概の女は、俺が話しかけたりすると赤くなって嬉しそうにする。
なのにこの女ときたら、ほとんど反応がないじゃないか。
過去にそういう女と出会ったことがないわけではないが、多少拍子抜けする。
店の奥の冷蔵庫まで行くと、彼女はそこを指さして俺に言う。
「この中に大体ジュース類は入ってる。ウォッカやブランデーはこっち」
そして次々と食材などの説明を始める。
「レモンとか、フルーツはそこね」
その単調な様子をみて、一筋縄ではいかないなと思った。
俺は小さく舌打ちをする。
「どうもありがとう。名前…志乃でいいんだっけ?」
俺が彼女の名前を呼ぶと、その表情が一瞬強張る。
「どうして知っているの」
「聞いたから」
俺は志乃との距離を詰める。
それにならって彼女は一歩下がった。
「…あってるけど」
まるで変なものを見るような目で、俺を睨みつける。