Sin(私と彼の罪)

そうか。


タキとヨージは知らないのだ。

この任務の本当の意図について。



「大体が世間話と酒やらの話だったな。暗号のようにも聞こえなかったし」

「そうか…まあ、そううまくもいかねえよな」



俺は息を吐きながら空を仰ぐ。

もう秋である。



この任務は、裏切り者の尻尾を掴むまで終わらない。
こんなに長期戦になるとは思わなかった。



「そのときヨージはいたか?」

「ああ。でもヨコイと接触を試みていたが、うまくいかなかった」



ヨージのことだ。
それは多いにありうる。



俺やタキと違って、ヨージは組織の中でも中堅程度だ。

そしてたまに、恐ろしいおっちょこちょいをしでかす。


わかりやすく言うと、トラブルメーカー。


任務ができないわけではないが、どこか頼りないのがヨージだ。



組んで任務をこなしたときは、本気で切れそうになったものだった。

組織を担うだけある男とは思えないが、それをスガヤに言ってもきっとへえ、と言われるだけだろう。




「…しょうがない奴だ。他には?」

「全くだ。あの役立たずが…まあ一応盗聴器は仕掛けておいたんだが、店員と話してすぐに帰ってしまった」

「店員?」

「ああ。お前も知ってるだろ、志乃という女だ」



やはり。


俺は口の端をつり上げる。

そんな様子にピンときたのか、タキもまた頬を緩めた。


「…ほんとに、お前は手がはやいな」


呆れたと言って肩をすくめる。


「そこがお前に欠けてるとこだよ」

「それもそうだ」

「志乃は俺にまかせろ」


そんな俺を見てくくく、と笑う。


「美人だしな。精々はまってくれるなよ」

「うるせえ。そんなことあるか」


タキは分かっているのだろうか。

俺が志乃に惹かれ始めているというのを。

いや、すでに惹かれているということを。



俺は舌打ちをすると、その場を離れた。


< 75 / 126 >

この作品をシェア

pagetop