Sin(私と彼の罪)
そうか。
タキとヨージは知らないのだ。
この任務の本当の意図について。
「大体が世間話と酒やらの話だったな。暗号のようにも聞こえなかったし」
「そうか…まあ、そううまくもいかねえよな」
俺は息を吐きながら空を仰ぐ。
もう秋である。
この任務は、裏切り者の尻尾を掴むまで終わらない。
こんなに長期戦になるとは思わなかった。
「そのときヨージはいたか?」
「ああ。でもヨコイと接触を試みていたが、うまくいかなかった」
ヨージのことだ。
それは多いにありうる。
俺やタキと違って、ヨージは組織の中でも中堅程度だ。
そしてたまに、恐ろしいおっちょこちょいをしでかす。
わかりやすく言うと、トラブルメーカー。
任務ができないわけではないが、どこか頼りないのがヨージだ。
組んで任務をこなしたときは、本気で切れそうになったものだった。
組織を担うだけある男とは思えないが、それをスガヤに言ってもきっとへえ、と言われるだけだろう。
「…しょうがない奴だ。他には?」
「全くだ。あの役立たずが…まあ一応盗聴器は仕掛けておいたんだが、店員と話してすぐに帰ってしまった」
「店員?」
「ああ。お前も知ってるだろ、志乃という女だ」
やはり。
俺は口の端をつり上げる。
そんな様子にピンときたのか、タキもまた頬を緩めた。
「…ほんとに、お前は手がはやいな」
呆れたと言って肩をすくめる。
「そこがお前に欠けてるとこだよ」
「それもそうだ」
「志乃は俺にまかせろ」
そんな俺を見てくくく、と笑う。
「美人だしな。精々はまってくれるなよ」
「うるせえ。そんなことあるか」
タキは分かっているのだろうか。
俺が志乃に惹かれ始めているというのを。
いや、すでに惹かれているということを。
俺は舌打ちをすると、その場を離れた。