Sin(私と彼の罪)
ヨコイが店に来た。
その情報を耳にした俺は、待っていましたとばかりに志乃のアパートへ向った。
部屋の前まで来て、合鍵を手にする。
ここに通い始めたころに勝手に俺が作ったのだ。
我ながら犯罪行為である。
それを知った志乃は「ストーカー」とか言って嫌そうな顔はしたが、取り上げられなかったのでいいとする。
「また来たの」
開口一番にそう言われると、こちらも溜息をつきたくなる。
「んだよ。わりぃか」
「べつに」
「腹減った。メシ」
「…アンタほんとに図々しいよね」
「…るせぇ」
志乃は自炊をしている。
もともと母子家庭だから、家事は慣れてるらしい。
今は母親が入院してるとかで、彼女は一人暮らしなのだが。
「今日はそーめん」
「肉が食いたい。肉が」
「私は夏バテしてんの。文句言うなら食うな」
キッと睨んで、俺に出した皿を奪う。
ヨコイがなぜコイツを気に入っているんだか今だにわからない。
「スイマセン。もう言いません」
へらりと謝ると、皿が俺の前に出される。
「どーぞ」
「イタダキマス」
こんなふうに二人で食卓を囲むのにも慣れた。
彼女は週4くらいで店に顔を出すが、俺と会うのは大体二日程度。
組織の仕事もたびたび受けているので、俺は常に店にいることはできないのだ。
志乃は金がいるらしく…なんでも母親の入院費らしいのだが。
昼間の間には駅前のレンタルショップでも働いていた。
俺は彼女が家にいる日を大体把握し、忙しいながらも、この部屋に足を伸ばしていた。