インスタントラブ~甘くて切ない一目惚れの恋~
そっと
廊下に顔を出して
あたりをたしかめる



しんと
静まり返っている。



いましかない。



だれもが
そう思ったのだろう。



みんな息を殺して、
そっと
新しい服に着替えた。



こっそり部屋を出て
気づかれないよう
細心の注意を払って
家の外に出る。




それから
一目散に山を降りた。



月明かりを頼りに
とにかく走った。



6人で競うように逃げた



振り返らないし
立ち止まらない



夢中で走った。



捕まって、
またあそこに連れ戻されるくらいなら

このまま死んだほうがまし



きっと
みんなそう思ったはず。



なにもいわなくても
その思いが痛いほど伝わってきた。



遠くへ、
できるだけ遠くへ行く。



その必死の思いで
ひと晩じゅう走った。



そして明け方、
ようやく
街はずれまで出られた。
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