インスタントラブ~甘くて切ない一目惚れの恋~
翌朝、
目覚めると
男はいなかった。



約束のお金。



探した。



一万円が数枚、
枕元に散らばっていた。



ほっとした。



と同時に、
なぜか
涙があふれてきた。




あんなひどい目にあっていたことを考えれば、

ここは天国。



一晩くらい買われたくらい、

あそこでの毎日を考えればどうってことない。



なのに
べつに
悲しいわけでも
辛いわけでもないのに
あたしは泣いてた。



けれど
そのとき
あたしの涙の池は
完全に枯れてしまった。



最後の一滴まで……



そう。



あたしはもう泣かない。



どんなことがあっても
泣くことはない。



涙なんて
一円にもならなんだから。



お金を握りしめると
外に出た。



はじめての
ショッピング。



新しい服と
メイク道具一式を
買った。
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