インスタントラブ~甘くて切ない一目惚れの恋~
「ひ、ひかり……大丈夫か?」



「……」



返事はない。



意識を失ってるみたい。



くそっ~
いったいだれが……

てか、
さっきのやつなのか……



振り返った。



しかし
親切なおばさまが駆け寄ってきて、

その視界を遮った。



心配そうに
怪我はないか
救急車を呼ぼうか

甲斐甲斐しくしてくれるのはありがたい



でもいま、
そんな悠長なことをやってる場合じゃない



伸びあがるようにして
体の向きを変え、
なんとか視界を作りだした。



階段の上のほう。



ゆっくり降りてくる男が
ひとり。



30代中頃の
細身で長身。



スーツ姿だけど、
全身ずぶ濡れ。



精気のない顔。



青白く、
うつろな目。



そして、
口許に下卑た笑いを浮かべていた。



こいつだ!
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