Sin〜AfterStory
顔を真っ赤にさせ鼻息も荒く、八百屋の店主は“誘拐犯”に詰め寄った。

「シンをさらいやがって!警察に訴えるぞ!」

後から入って来たアニタはシンのワープロを抱えていた。どうやら、残っていた文章からここに気が付いたのはアニタの方らしい。

「さらったなんて人聞きの悪い事お言いでないよ。あんたがシンを独り占めするから仕方なくこんな手を使ったんだろ」

「寝言を言うな!これは立派な誘拐だぞ!通報してやる!」

「だってそうでもしなきゃお前さんはシンと話もさせてくれないだろう?あたしだって泣く泣くこうした訳さ、お前さんが石頭なせいでね」

「偏屈ばあさんが何を言うか!!お前、状況を分かってないだろ!!シンはな、下手な所に出たらリンチに遭うかも知れないんだぞ!」

店主のその言葉に、さすがのおばあさんも黙りこんだ。

そう、この国アイルでは、不法移民に対する制裁と称したルージャ移民への暴行事件が今も後を絶たない。

都心から離れたこの街にさえ、未だルージャの人間を目の敵にしている人達が居るのだ。この商店街には、シンに手出しをする人が居ないと言うだけで。

だから、ジャックは仕事に行くときシンを一人にさせず、店主の所に預けている。勿論、シンの体が不自由で誰かの世話が必要だというのが主な理由ではあるけれど。


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