『伝言歌』
営業時間を終え、昼間賑わいを見せていた商店街も静寂に包まれている。
その通りを抜けると駅前の広場へと続く。
広場には石で作られた時計台に数本の街灯、木造のベンチが設置されているだけの小さな広場だった。
あたしは時計台の前に、そっとギターケースを置き、その前に腰を降ろす。
ぱちん、ぱちんと、そのケースを開き、フェンダーのアコースティックギターをそっと取り出した。
胡座の上に置いたギターを抱え、弦のチューニングを済ませると何度か爪弾く。
「よし!」
調律の具合を確かめると、一呼吸置いた後、静かに歌い始める。
良い意味でくせがなく、伸びのある歌声は静かな広場に響き渡っていた。
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