『伝言歌』


どうしてそんな場所から現れたのか考えていると、「名前は?」と聞かれた。


「……え?」

「だから、名前は?」

「……」

「はぁ……俺は片岡雄太(カタオカ ユウタ)。で、そっちは?」

「……に、西澤詩織(ニシザワ シオリ)」

「ふーん……。まぁ、また近いうちに会うと思うよ。またね」



自分から聞いてきたくせに、興味なさそうに答えた彼は意味深な言葉を残して去っていった――。


あたしは訳が分からぬまま、その場に立ち尽くしていた。




しばらくしてからギターをケースにしまい、家へと向かう。


空には真ん丸の月が堂々と輝いていた。





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