月の恋人
「そりゃあ、涼くんも災難だったねぇ…。」
「え?涼?…なんで?」
災難を受けているのは
あたしの方だよ、亜美。
涼のことなんて
あの、訳のわからない大音量のオーケストラの件しか話さなかったのに
開口一番、亜美から出たのは、涼の名前だった。
「…なんで、って……」
やれやれ、と呟いて
大きなため息を吐く亜美。
「ま、とにかく。陽菜は…目の前にある課題から、ひとつひとつ片付けていかなきゃね。」
課題を
“ひとつ、ひとつ”かぁ。
まるで、先生みたいだよ亜美。