月の恋人



ずっと

触れたくて
触れたくて
仕方なかった陽菜の唇は


想像していたよりもずっと
温かくて、優しくて



涙が、落ちそうになった。




――…なんで、こんなに柔らかいんだよ。


禁断の扉を
自分の手で、開けてしまった。




口に残るマシュマロのせいか

初めてのキスはやけに甘くて。


一度覚えた感触は癖になりそうで、ついばむように口づけを繰り返した。






――…もっと

―――――…もっと




片手で触れる陽菜の肌は
吸い付くような感触で。


肩から胸に続く鎖骨のラインが

妙になまめかしくて。




もうこれ以上はダメだと、頭のどこかで警告音が鳴っているのに


欲望に逆らう術を、俺は知らなかった。



――――…もっと


――――――…もっと






肩紐に手を伸ばした瞬間、陽菜が身をよじらなければ


俺はどこまで行ってたんだろうか。











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