月の恋人
「……………………」
翔くんが、あたしと涼を交互に見つめる。
あたしは、無意識に涼の肩をきつく握り締めていた。
――…どうしよう、こんなの…涼が変に思うよ…
小刻みに震える手足が、何も言わなくてもあたしの緊張を訴えていて。
直に触れている涼が、それに気付かない筈がなかった。
それ以上、耐えられなくて
「……涼、…降ろして…」
消え入りそうな声で、懇願した。
「…自分で歩けないくせに、何言ってんだよ。」
涼の言葉に、翔くんが反応する。
「歩けない?何があったんだ?」
「…っ…触んなっ!!」
翔くんがあたしに手を伸ばそうとした瞬間、涼が怒鳴った。
「…急にいなくなったって、どーゆー事だよ?…陽菜をこんなとこに呼んだの、翔なのか?」
涼が、翔くんに噛み付いた。
「涼!?やめて、ちがう…っ!!!」
「何が違うんだよ!!」
「……あ…あたしが…」
―――…あたしが……勝手に……