月の恋人




「……………………」


翔くんが、あたしと涼を交互に見つめる。


あたしは、無意識に涼の肩をきつく握り締めていた。




――…どうしよう、こんなの…涼が変に思うよ…


小刻みに震える手足が、何も言わなくてもあたしの緊張を訴えていて。

直に触れている涼が、それに気付かない筈がなかった。


それ以上、耐えられなくて

「……涼、…降ろして…」

消え入りそうな声で、懇願した。



「…自分で歩けないくせに、何言ってんだよ。」

涼の言葉に、翔くんが反応する。




「歩けない?何があったんだ?」

「…っ…触んなっ!!」

翔くんがあたしに手を伸ばそうとした瞬間、涼が怒鳴った。



「…急にいなくなったって、どーゆー事だよ?…陽菜をこんなとこに呼んだの、翔なのか?」


涼が、翔くんに噛み付いた。


「涼!?やめて、ちがう…っ!!!」

「何が違うんだよ!!」


「……あ…あたしが…」



―――…あたしが……勝手に……






< 201 / 451 >

この作品をシェア

pagetop