月の恋人
涼の歩みが、止まった。
「陽菜ちゃんっ!!」
あたしの名前を叫びながら、翔くんがこっちに走ってくる。
――――…なんで?
「…………っ… 翔くん…」
思わず、身を強張らせた。
フラッシュバックする地下室の光景。
――――…
『鹿島さん。追っかけなくていいの?』
『ごめんね、陽菜ちゃん、ちょっと待ってて』
―――――…や
あたし……どんな顔したらいいの?
わからない。
わかんないけど……
「…………来、ないで…」
震えながら
思わず、口からこぼした言葉を
涼が、聞き逃すはずもなくて。
「ハァッ……良かった……ッ…探したよ。急にいなくなったって聞いたから……。って、涼も一緒だったのか?…ッ…知らなかった……」
息を荒くしてそう言った翔くんに
「…………どういう、事だ?」
涼が、聞いた事もない低い声で、唸った。