月の恋人



「……もーいーよ、…とにかく…お前、ヤバイから帰るぞ。」


そのまま何も言えなくなったあたしを背に乗せて、涼が再び歩き出そうとする。



「おい、涼、ちょっと…」

翔くんが戸惑っているのが分かる。


「あ?邪魔なんだけど………で、翔は、こんな場所で何してたわけ?」


「…何って…」


「陽菜が、ガイジンに襲われてたとき、何してたわけ!?」


「涼!やめてって…」


翔くんがあたしを見つめる。
視線が…絡まる。


「…………っ…ガイジンに襲われた、って…」


「この辺、ドラッグ持ってる奴いっぱいいるだろ。パニックで過呼吸になってたんだよ、さっきまで。」


「………っ」


「………俺は、納得してねーからな。」


そう言い放って、涼は、翔くんをそこに残して、駅に向かって歩き始めた。



翔くんは、
追い掛けてこなかった。





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